じょいとも個展
「大蟹伝説」
現在から800年前、鎌倉時代のことである。
越中砺波山に山奥に佇む古池には、
人々を脅かす大きな化蟹が住んでいた。
化蟹は砺波平野を荒らし回り、人々を襲った。
これに立ち向かった寺々の住職たちは次々と命を落としていった。
あるとき、化蟹は次なる獲物を求め八講田本叡寺に現れた。
化蟹は住職に謎解き対決を挑む。
「大足二足、小足八足、両眼天をにらみ、横に走り縦に走るもの何者ぞ」
謎を解き明かした和尚は怯んだ大蟹に錫杖を振った。
傷ついた化蟹は本叡寺から逃れたが、五郎丸川で力尽きた。
ついに化蟹は倒され、砺波平野に平和が戻ったのだ。
これは、僕が生まれ育った蟹谷の地に伝わる伝説である。
蟹谷の地名の由来となったと云われるこの伝説のルーツを探るとき、
幾つも存在する伝説のバリエーション、
そして日本各地に伝わる大蟹伝説との繋がりが見えてきた。
化蟹を破った住職とは何者か?
化蟹の正体は一体何なのか?
そして、蟹谷の地の本当の由来とは?
現代から鎌倉、戦国、そして平安末期に至る時代を超えた冒険は、
一山村の言い伝えの探求に留まらず、
失われた日本の地方文化を浮き彫りにする。
僕はこの大蟹伝説の伝承者として、
そして日本の地方文化の後継者として、
この場にその結実を示したいと思う。
じょいとも個展
「大蟹伝説」
会期:2015/12/19-20
会場:中野ZERO美術ギャラリー2F